2025年2月22日に発表したBerkshire Hathaway Inc.(バークシャー・ハサウェイ) の 2024年の年次報告書(Annual Report)で、ウォーレン・バフェットが日本の商社株について言及したことがニュースになっています。
2019年にバフェット氏が5大商社株(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)を買って以降、筆頭株主です。
今回さらに買い増しの意向を示した理由を、Berkshire Hathaway 2024年年次報告書から読み解きます。
現在のバフェットの商社株の保有状況と投資方針
バークシャー・ハサウェイは、2019年7月から日本の総合商社株の購入を開始しました。
現在の保有額は以下の通りです。
- 投資額:138億ドル(約2兆円)
- 時価評価額:235億ドル(約3.5兆円)
- 年間配当収入(2025年予想):8.12億ドル(約1,200億円)
- 保有比率:当初10%以下を上限としていた
(今回、企業側と交渉し、若干の上限緩和 に成功。)
バフェットはこの投資を 「非常に長期的な視点で保有する」 と明言しており、今後も 買い増しの可能性 が高いといえます。
バフェットが日本の商社株を評価する5つの理由
バフェットはかねてより日本の商社株を評価しています。その証拠に、2019年から5大総合商社の株を買い集め筆頭株主になっているのです。
2024年の年次レポートから読み解ける、バフェットが日本の商社株を評価する理由は、以下の5つです。
- 日本の総合商社の事業モデルがバークシャー・ハサウェイに似ていること
- 日本の総合商社の配当収益が高いこと
- 日本の総合商社の割安なバリュエーション
- 日本の総合商社の経営陣の資本効率向上への意識が高いこと
- 為替戦略(円安メリット)として好都合
①日本の総合商社の事業モデルがバークシャー・ハサウェイに似ていること
バフェットが日本の総合商社に魅力を感じる理由の一つは、日本の総合商社の事業モデルがバークシャー・ハサウェイに似ていることです。
総合商社は、エネルギー、資源、食料、インフラ、金融など、多岐にわたる事業を展開し、多角的な投資企業として機能しています。
バークシャー・ハサウェイが保険業を基盤としながら、鉄道、エネルギー、製造業などに幅広く投資している構造と共通しているのです。
バフェット自身も、商社を「日本版バークシャー」と評価しており、安定したキャッシュフローと堅実な経営が長期投資に適していると判断しています。
- 総合商社は「多角的な投資企業」 であり、バークシャーのビジネスモデルと類似している。
- 各商社は、エネルギー、資源、食料、インフラ、金融など、幅広い事業ポートフォリオ を持つ。
- バフェット自身、商社の経営を「日本版バークシャー」として評価。
②日本の総合商社の配当収益が高いこと
バフェットが日本の総合商社に魅力を感じる理由の一つは、日本の総合商社の配当収益が高いことです。
商社株は、バフェットが重視する安定したキャッシュフローの源泉となります。
バークシャー・ハサウェイは、2024年時点で商社株から年間8.12億ドル(約1,200億円)の配当を受け取っており、投資のリスクを抑えながら安定的な収益を確保しているのです。
商社の配当利回りは4〜5%と高く、持続的な利益還元が期待できます。
バークシャーは配当収入を新たな投資や自社株買いに活用することで、さらなる成長を目指す方針を貫いており、商社株はその戦略に合致する魅力的な資産となっているのです。
- 年間8.12億ドル(約1,200億円)の配当収入 を生み出しており、これは低リスクで安定した収益源。
- 配当利回りは 4〜5%前後 と高く、バークシャーの「安定したキャッシュフローを重視する方針」と合致。
③日本の総合商社の割安なバリュエーション
バフェットが日本の総合商社に魅力を感じる理由の一つは、日本の総合商社の割安なバリュエーションです。
バフェットの投資哲学は、「割安な資産を長期保有し、時間を味方につける」というバリュー投資の原則に基づいています。
商社株は、2019年の投資開始時点でPER(株価収益率)が6〜8倍と割安であり、2024年時点でも米国市場に比べて低い評価水準です。
米国市場では成長株が高いPERで取引される傾向がありますが、日本の商社株は安定した収益力を持ちながらも、市場の評価が相対的に低いといえます。
このような環境は、長期的なリターンを重視するバフェットにとって、魅力的な投資機会となっているのです。
- 投資開始時点(2019年)で、商社株は PER(株価収益率)が6〜8倍程度と割安 だった。
- 2024年時点でも、依然として 米国市場に比べて割安。
- 「バフェット流バリュー投資」の観点 から、魅力的な投資対象。
④日本の総合商社の経営陣の資本効率向上への意識が高いこと
バフェットが日本の総合商社に魅力を感じる理由の一つは、日本の総合商社の経営陣の資本効率向上への意識が高いことです。
バフェットは、企業の経営陣が資本をどのように活用するかを重視します。
近年、日本の総合商社の経営陣は、株主価値の向上を意識した資本政策を強化中です。
自社株買いや配当の増加といった資本配分の最適化が進められており、バークシャーの投資方針と一致します。
商社の役員報酬は米国企業ほど高額ではなく、株主を重視する姿勢が評価できるでしょう。
こうした経営方針の変化は、バフェットが長期的に商社株を保有し続ける大きな要因となっているのです。
- 各商社の経営陣が 「株主価値の向上」 を意識した経営を強化。
- 自社株買い、配当増加 など、資本配分の最適化を進めており、バークシャーの期待と一致。
- 報酬制度も 米国企業ほど高額ではなく、株主重視の姿勢 を評価。
⑤為替戦略(円安メリット)として好都合
バフェットが日本の総合商社に魅力を感じる理由の一つは、為替戦略(円安メリット)として好都合な点です。
バークシャー・ハサウェイは、円建て債務を増やすことで為替リスクを管理しています。
2024年時点で、バークシャーの円建て負債の年間利息は1.35億ドルである一方、商社株から得られる配当収入は8.12億ドルに達しているのです。この差額により、為替変動の影響を受けにくい戦略を構築しています。
円安が進行すれば、ドル建てでの投資リターンが増加し、さらに有利な状況となるのです。
為替リスクを考慮しながらも、長期的なリターンを確保する戦略として、日本の商社株は理想的な投資対象となっています。
- バークシャーは 円建て債務を増加 させ、為替ヘッジを実施。
- 円安になれば、ドル建てでの投資利益が増える。
- 2024年時点で、バークシャーの円建て負債の利息は1.35億ドルに対し、商社株の年間配当収入は8.12億ドル と、大幅な収益超過 となっている。
今後の見通しと投資リスク
今後、バフェットにならって商社株を買い増ししたほうがいいのでしょうか。
見通しと投資リスクについて解説します。
商社株の買い増しの可能性
バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、今後も日本の総合商社株の持ち分を増やす可能性が高いです。
これまで商社各社とは、株式保有比率を10%以下に抑える方針で合意していたが、企業側との交渉により、この上限が若干緩和されました。
バフェットは、商社株の長期保有を強調しており、追加投資の可能性を示唆しています。
2025年以降も、市場環境や各商社の経営戦略を見極めながら、買い増しを進める可能性が高いです。
バークシャーは、堅実な資本配分と安定した配当収益を重視しており、商社株はその投資戦略に適合しているといえるでしょう。
投資に伴うリスク
バフェットが商社株を高く評価する一方で、いくつかの投資リスクも存在します。
まず、日本市場特有の「持ち合い文化」により、企業ガバナンスの改善が進みにくい可能性があります。
日本企業は歴史的に相互に株を保有し合う傾向があり、株主価値向上を重視する欧米型の経営手法とは異なる部分があるのです。
商社はコモディティ(資源価格)の影響を大きく受ける業態であり、原油や天然ガス、鉱物資源の価格変動によって業績が左右される点もリスク要因となるでしょう。
また、日銀の金融政策変更による為替リスクも無視できません。
円安が進めばバークシャーにとって有利な状況が続くが、将来的な円高局面では投資収益が減少する可能性があります。
まとめ
バークシャー・ハサウェイは、日本の総合商社を「日本版バークシャー」と見なし、長期保有を前提とした投資を継続する方針です。
バフェットが商社株を魅力的と考える理由は、多角化された事業ポートフォリオ、安定した配当収益、高い資本効率、割安なバリュエーション、円安を活用した為替戦略 などにあります。
今後も、商社各社の経営戦略や市場環境を見極めながら、買い増しを進める可能性が高いです。
一方で、日本市場の特性や資源価格の変動、為替リスクなどの要因を考慮する必要があり、引き続き慎重な投資判断が求められるでしょう。
また、商社だけでなくほかのセクターにも買いを増やすのかも注目です。
いずれにせよ、バークシャー・ハサウェイの2024年年次報告書は全世界の人が注目しているので、日本株にとって追い風となると言えるでしょう。
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