アメリカ時間の2025年1月20日に、二期目となるドナルド・トランプ大統領(以下トランプ大統領)が誕生しました。
一期目の際にも、トランプ氏の発言により日本株は大きな影響を受けた印象を持つ方も多いでしょう。
「前回の時には毎回トランプ大統領の発言を旧Twitterでチェックしていたな」
「前回と今回でトランプ大統領の政策や日本株への影響はかわるのかな」
いわゆるトランプ相場で、日本株が荒れるのではないかと警戒している人も多いと思います。
この記事では、一期目のトランプ政権と比較し、トランプ新大統領就任演説から日本株にどのような影響が及ぶかを予測します。
「トランプ2.0」の大統領就任演説で注目される3つのトピックス
アメリカ時間の2025年1月20日に、トランプ大統領がワシントンの連邦議会議事堂で就任演説を行いました。
▼トランプ大統領就任演説の日本語訳全文
トランプ大統領の就任演説から読み解ける注目のトピックは以下の3つです。
- 「アメリカ第一主義(”America First”)の再強調」
- 「 国際秩序の再編(”Peace Through Strength”)」
- 「経済政策のリセット(”Economic Revival”)」
トランプ新大統領就任演説で注目「アメリカ第一主義(”America First”)の再強調」
トランプ大統領就任演説で注目のトピックの1つ目は「アメリカ第一主義の再強調」です。
2017年のトランプ大統領就任演説でも「アメリカ第一主義」を掲げ、世界から注目を浴びました。
「アメリカ第一主義」とは、自国民最優先の思想のことです。
具体的には、以下の項目が「アメリカ第一主義」に該当します。
- 自国民から徴収した税金は、自国民のために使うこと。
- 自国を安全な国にするために、国境を強化し不法移民対策を講じること。
- 外国歳入庁を設置し、外国に関税をかけて自国民を潤すこと。
- チップの課税を廃止し、自国民の収入を増やすこと。
- 国内製造業の復活、エネルギー独立の推進(化石燃料への回帰)を進めること。
トランプ大統領のコア支持層は、製造業労働者や農業関係者といったブルーカラー層と言われています。
「アメリカ第一主義」はワシントン体制で職を失ったブルーカラーの人々に熱く響くメッセージなのです。
トランプ新大統領就任演説で注目「 国際秩序の再編(”Peace Through Strength”)」
トランプ大統領就任演説で注目のトピックの2つ目は「国際秩序の再編」です。
トランプ大統領はアメリカの軍事力と影響力を持って、国際的な自国の立場を押し上げる政策を講じるような内容を述べています。
具体的には、以下の項目が「国際秩序の再編」に該当するものです。
- 自由貿易の否定、関税を用いて他国との政治的交渉を行うこと。
- 領土の拡大、メキシコ湾をアメリカ湾にしパナマ運河を返還させること。
- 気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」や世界保健機関(WHO)から再び離脱すること。
- 軍備を強化し、宇宙開発も進めること。
これらの発言は、日本を含む同盟国の防衛・外交政策に大きな影響を与える可能性があります。
トランプ新大統領就任演説で注目「経済政策のリセット(”Economic Revival”)」
トランプ大統領就任演説で注目のトピックの3つ目は「経済政策のリセット」です。
具体的には、以下の項目が「経済政策のリセット」に該当します。
- 史上最大規模のトランプ減税、法人税や所得税の引き下げをすること。
- エネルギー産業やテクノロジー分野での規制緩和をし、成長を促進すること。
- 労働者層に就業機会を設けるために、インフラ設備計画を再び掲げること。
米国市場を活性化すれば、日本株市場にも間接的に好影響を与えるでしょう。
一期目のトランプ大統領演説で日本株において注目された3つのトピックス
一期目となる2017年のトランプ大統領の大統領就任演説は、彼の「アメリカ第一主義」と対エスタブリッシュメント姿勢を強調したものでした。
▼2017年のトランプ大統領就任演説の日本語訳全文

2017年のトランプ大統領就任演説から読み解ける注目のトピックは以下の3つです。
- 「アメリカ第一主義(”America First”)」
- 「 政治エスタブリッシュメントへの批判」
- 「国の再建と愛国心の奨励」
一期目のトランプ大統領就任演説で注目された「アメリカ第一主義 (“America First”)」
一期目のトランプ大統領は「アメリカ第一主義」を演説の中心に据え、経済や外交政策でアメリカの利益を最優先する姿勢を明確にしました。
具体的な内容は以下です。
- 国内産業の保護: トランプ氏は、アメリカの工場が閉鎖され、雇用が海外に流出している現状を
批判しました。国内製造業の復活を目指し、保護主義的な政策を推進することを表明したのです。 - 貿易の見直し: 不公正な貿易協定を撤廃し、アメリカにとって「公正」な協定を求める意向を示しました。
後の米中貿易戦争やNAFTAの再交渉(USMCA)につながる政策の布石です。 - 雇用創出: アメリカ国内で「仕事を取り戻す」というメッセージを強調し、
インフラ投資やエネルギー政策での雇用増加を提案しました。
この「アメリカ第一主義」は、製造業の衰退で苦しんでいた中西部のラストベルト地域(鉄鋼業・自動車産業の中心地)の有権者への直接的な訴えでした。
一期目のトランプ大統領就任演説で注目された「政治エスタブリッシュメントへの批判」
一期目のトランプ大統領はワシントンの既存の政治体制を厳しく批判し、政治エリートから国民に権力を取り戻すと約束しました。
具体的な内容は以下です。
- 支配層の利益ではなく、国民のために働く政府をつくる: トランプ大統領は「政府が国民を裏切り、エリートの利益だけを追求している」と主張しました。自らを「アウトサイダー」と位置づけたのです。
- 国民への権力返還: 演説では「今日、この式典の中心にいるのは、あなたたち(国民)だ」と述べ、従来のワシントン政治に対する不満を代弁しました。
- 「沼の排水」: ワシントンの汚職や特権構造を「沼」と表現し、解体するという選挙中のスローガンを改めて強調したのです。
この主張は、政治的エリートに不満を抱く有権者に向けたものであり、「支配階層の政治」を変革するという強い決意を示しました。
一期目のトランプ大統領就任演説で注目された「国の再建と愛国心の奨励」
一期目のトランプ大統領は「国の再建」と「愛国心」の重要性を訴え、アメリカを「再び偉大な国にする」というテーマを繰り返しました。
具体的な内容は以下です。
- インフラ再建: 老朽化した道路、橋、空港、学校などのインフラを再建し、
経済の基盤を強化すると宣言しました。 - 愛国心の鼓舞: 国民に対して「アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇う」ことを呼びかけ、
国内経済の自立を促進したのです。 - 国境の保護: 不法移民問題を取り上げ、「国境の壁」建設など、国境管理を強化する方針を表明
このメッセージは、トランプ大統領のスローガン「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」を象徴するもので、国民に自信と誇りを取り戻すという意図がありました。
一期目のトランプ政権の実際の政策は?
実際の一期目のトランプ大統領の政策(2017年〜2021年)は、「アメリカ第一主義」を掲げた政策が中心でした。
トランプ政権の主な政策は以下です。
減税政策(Tax Cuts and Jobs Act, 2017)
法人税率を35%から21%に大幅引き下げ、個人所得税の減税も実施。
企業利益の増加を促進し、株式市場全体を押し上げました。
保護主義的な貿易政策
中国に対する関税(米中貿易戦争)やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉(USMCAの成立)を推進。
日本も対米輸出に関して圧力を受け、特に自動車産業が影響を受けました。
規制緩和
環境規制や金融業界への規制を緩和し、企業活動を活発化。
エネルギー関連や製造業が恩恵を受け、グローバル市場全体の成長を後押ししました。
インフラ投資の拡大
インフラ整備を重点政策に掲げましたが、議会との対立もあり、実現は限定的でした。
ドル高政策と金融政策
財務長官が「ドル安は好ましい」との発言をする一方、
トランプ氏は時にFRB(米連邦準備制度)を批判するなど、為替市場への影響も一定ありました。
一期目のトランプ政権の日本株への影響は?
- 米国株高が日本株を牽引
- 減税政策や企業業績の改善を受けた米国株式市場の好調が、日経平均株価にも好影響を与えた。
特に輸出関連株(自動車、精密機器など)が恩恵を享受。
- 減税政策や企業業績の改善を受けた米国株式市場の好調が、日経平均株価にも好影響を与えた。
- 為替の影響
- トランプ政権の政策が円安・ドル高を促進し、日本の輸出企業に追い風。
特に2017年~2018年は円安基調が続いた。
- トランプ政権の政策が円安・ドル高を促進し、日本の輸出企業に追い風。
- 米中貿易摩擦の波及
- 米中貿易戦争が日本にも影響し、中国市場への依存度が高い企業(機械・電子部品メーカーなど)は業績に不安。一方で、製造業の「中国からの脱却」が進む中で、日本企業は一部恩恵を受けた。
- 安倍政権との関係強化
- トランプ政権下で日米同盟が重視され、日本企業が米国市場での投資や雇用拡大を進めた。
これが両国の経済的な結びつきを強化し、日本株の安定に寄与。
- トランプ政権下で日米同盟が重視され、日本企業が米国市場での投資や雇用拡大を進めた。
トランプ政権の一期目は、米国主導のグローバル経済の回復と株式市場の上昇を後押ししましたが、貿易摩擦やドル高政策が日本企業に対するリスクとして浮上しました。ただし、日本株全体としては、円安や米国株の好調に支えられ、ポジティブな影響が優勢だったと言えます。
特に、輸出依存度が高い企業や自動車メーカーに注目が集まりました。
「トランプ2.0」で注目される日本株への影響を予想!
「トランプ2.0」で注目される日本株への影響は、「規制緩和」と「関税」に関して影響を大きく受ける銘柄へ大きくなるでしょう。
- 円安進行の可能性
トランプ政権の政策がドル高を促す場合、円安が進み、輸出関連株(自動車、精密機器など)に恩恵が及ぶ可能性が高いです。 - 貿易摩擦へのリスク
中国だけでなく、日本にも貿易赤字是正の圧力をかける可能性があり、特に自動車業界への影響が懸念されます。 - 防衛関連株の注目
日本が国防費を増加させる方向に進む場合、防衛関連株が注目される可能性があります。
「トランプ2.0」で注目のセクターはズバリ○○!
「トランプ2.0」で「防衛」や「自動車」関連の銘柄が注目されてるのは、一期目のトランプ政権からも予想している人が多いことでしょう。
それ以外にも注目すべきセクターが3つあります。
- 関税関連(米中摩擦の影響を受けにくい or 米国市場依存度が高い銘柄)
- 法人税減税(米国で事業展開する日本企業が利益拡大)
- エネルギー関連(シェール拡大・石油規制緩和で恩恵)
1. 関税関連(米中摩擦の影響を受けにくい or 米国市場依存度が高い銘柄)
- コマツ(6301) → 米国市場での建機販売が好調。インフラ投資の恩恵も。
- 日立建機(6305) → 建設機械需要が増加する可能性あり。
- ダイキン工業(6367) → 空調機器は米国住宅市場回復の恩恵を受ける。
- ファナック(6954) → 産業用ロボットメーカー、米国製造業投資の増加で恩恵。
- キーエンス(6861) → 自動化需要の増加で、米国工場の省人化投資が追い風。
- 米中貿易摩擦が再燃すると、中国依存度の高い企業はリスク。米国市場が中心の銘柄が有利。
- インフラ投資拡大なら、建機やFA(ファクトリーオートメーション)関連が恩恵を受ける。
2. 法人税減税(米国で事業展開する日本企業が利益拡大)
- ソニーグループ(6758) → PlayStation事業の北米売上比率が高い。
- リクルートホールディングス(6098) → Indeedなど米国求人サイト事業で成長。
- 武田薬品工業(4502) → 米国売上比率が高く、税制優遇の恩恵を受ける可能性。
- 三井不動産(8801) → 米国のオフィス・商業施設事業が税制改革でプラス要因。
- 日本電産(6594) → EV・省エネモーター需要の増加により、米国工場の利益向上。
- 法人税減税が実現すると、米国での営業利益が増加する企業が有利。
- 特に、米国売上比率の高い企業が注目される。
3. エネルギー関連(シェール拡大・石油規制緩和で恩恵)
- INPEX(1605) → 日本最大の石油・ガス開発企業。原油価格上昇で利益拡大。
- 出光興産(5019) → 石油精製・販売。原油価格上昇で利益増加。
- 三井物産(8031) → 資源投資を多数抱え、エネルギー市場活性化の恩恵。
- 住友商事(8053) → 米国シェール事業を展開。トランプ政権の支援が期待できる。
- Jパワー(9513) → 火力発電向け燃料需要増で安定成長。
- トランプ氏の政策では、化石燃料関連の規制緩和が進む可能性が高い。
- シェールオイルの増産が進めば、原油・ガス関連銘柄の利益が拡大。
「トランプ2.0」での戦略はどうする?
- 短期的には、エネルギー関連やインフラ関連が最も恩恵を受ける可能性が高い。
- 中長期的には、法人税減税の影響が大きい企業(米国売上比率の高い企業)も狙い目。
- 関税政策がどう動くかは不透明なため、米国市場比率の高い銘柄を選ぶのがベター。
トランプ2.0の政策を考慮しつつ、これらの銘柄に注目すると面白いかもしれません。
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